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0.1mm足りない

大人になることが怖かったあの頃の私へ

「大人になるのは辛いぞ。今のうちが一番楽しいぞ」

 

「浪費」できるほど自由に使えるお金がなかった頃、こんな言葉をよく聞いていた。大人になることがとにかく怖かった。大人にはなりたくないけれど、息が詰まるような狭い世界がとにかくしんどくて、死んでしまいたいと思っていた頃。今よりも辛いのが大人なら、どうして希望を持って生きていけるのかと、苦しい気持ちでいっぱいだった。

 

その頃の私に、大人になった今伝えたい。大丈夫、大人は最高に楽しい。生きていてくれてありがとう。――同人誌からスタートし、先日小学館より発行された書籍「浪費図鑑」(劇団雌猫,2017)を読み終えたあと、こんな気持ちが一番最初に浮かんできた。すでにいろいろな方が感想を書かれていて、どれも作品の魅力を素晴らしく語っておられるところだけれども、私も超超超個人的な感想ではあるが書き留めておきたい。

 

 

この本には、「浪費」という手段をもって様々な対象への愛を注いできた女性たちの赤裸々なエピソードが書かれている。詳しくはリンク先の特設ページや目次をぜひ見てほしい。(また、この感想内で浪費に「」をつけているのはわざとである。浪費という一見マイナスな単語が使われている理由もはじめにで書かれていて、その文章もとても素敵なのでぜひかみしめてほしい)

http://www.shogakukan.co.jp/pr/rohi_zukan/

どのエピソードも面白くて、様々な世界と愛の形があることを知ることができる。

 ところで、私自身はいわゆる「にわか」な人間で、何かに深くのめり込むというよりも広く浅く楽しむタイプである。「浪費」自体もそこまで大きな額は今までない。それでも、好きな本や雑誌、アニメの円盤にお金を使っているときは本当に幸せで、ついつい「浪費」という形で愛情表現をしてしまうことも身に覚えがある。なので半分共感、半分未知の世界を覗き見するような気持ちで読み進めていた。どの方も文章が本当に巧みで、ぐいぐいと惹きつけられていく。その中でも私がとびきりにぐっときたエピソードと一文がある。

”誰かが何かを好きなことには理由があって、きっとその誰かにとっては無駄ではない、意味のあること。その浪費は必ず何かに繋がっていく”

(ロザンで浪費する女/浪費図鑑)

本全体から伝わるメッセージが、この一文に表れているように感じた。この本は決して「こんなやばい生態の人たちがいるんですよ」とさらし者にして読者に優越感をもたせるようなタイプのものではない。むしろ反対で、誰かのあらゆる主体的な「好き」な気持ちをまるっと肯定してくれるような優しさを感じる。そしてなにより、一番に伝わってきたのは「楽しい!!!!」というシンプルな感情だ。それに触発されたから、冒頭記したような気持ちが沸いてきたのかもしれない。

 

生きていくのって大変だ。悩みも不安も次から次へとわいてくる。お金を稼ぐためにつかれた体を引きずり、眠い目をこすって働かなきゃいけない。現実はあいかわらずしんどい。

それでも、お金を稼いで、好きな対象に費やすことができる。世界は広くて、面白いものがたくさんあると気づくことができる。自分の力で飛び込んでいける。それは本当に楽しくて、幸せなことなんだと改めて思った。大人は楽しい。人生は楽しい。自分の幸せは自分で掴み取っていく。そして何より、そういう女性が、こんなにもたくさんいるということ。大人になることを怖がっていた私へ、伝えてあげたい。

 

書籍の魅力が十分に伝えられない文章力がもどかしい……。けれども率直な感想でした。

 

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*1:ちなみに最近はユーリ!!!on ICEとキラキラ☆プリキュアアラモードが私の「浪費」対象です